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伊藤若冲がいた!皇居三の丸尚蔵館・「開館記念展 皇室のみやび―受け継ぐ美―」

 

皇居三の丸尚蔵館 

皇居三の丸尚蔵館(こうきょさんのまるしょうぞうかん)、英語では「 Museum of the Imperial Collections(ミュージアム・オブ・ジ・インペリアル・コレクションズ)」

皇居の、一般人も入れる地域「東御苑(ひがしぎょえん)」の中の、大手門近くにある、皇室由来資料の保管庫・兼・展示施設「皇居三の丸尚蔵館(こうきょさんのまるしょうぞうかん)」。

皇居三の丸尚蔵館

ここには皇室由来の宝物の数々が所蔵されていて、内部に展示会場もあるので、その宝物群を、我々一般人も展覧会で見ることができます。

本来なら畏(おそ)れ多くも天皇家の「御物(ぎょぶつ)」として、一般には見ることなどあり得なかったものを、それも旧江戸城、皇居の敷地の中で真近に見ることが出来るので、幸せな時代になったものだと思います。

現在も工事中

工事中の建物部分

現在、2026年の完成を目指して建物を改築中で、展覧会はすでに出来上がった建物部分で開かれています。

shozokan.nich.go.jp

ネット予約制

最近はもう、どこの美術館、展覧会もネット予約になってしまってますね。

確かに便利で、紙のチケットを持ち歩いたりしなくて済むので助かります。

今回、たかを括ってギリギリ前日に予約しようと思ったら、もう最終日までいっぱい。

ありゃ、これはしまったしくじった、と思いましたが、もしやと思い、しばらく時間が経ってから予約サイトを覗いてみたら、キャンセルが一つだけ出ていました。

これは天が味方した、と思い、速攻で申し込んだら、なんと取れました。

なお、料金は、

・一般は1000円、

・大学生は500円、

・高校生以下および満18歳未満は無料

・満70歳以上も無料

です。

そして、当日は、大手門のところで手荷物検査があります。

「皇室のみやび―受け継ぐ美―」第4期

2024年6月12日現在、開かれていた展覧会は、皇居三の丸尚蔵館 開館記念展「皇室のみやび―受け継ぐ美―」。

2023年の11 月3 日開幕ですが、全部で「4期」に分かれていて、今回のご報告は第4期の「皇居三の丸尚蔵館の名品」令和6年5月21日(火)―6月23日(日)のものになります。

☆なお、ご紹介する写真は全て「撮影可」のものです。

pr-shozokan.nich.go.jp

国宝・伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)「動植綵絵(どうしょくさいえ)」

この時は第4期だったので、展示されていたのは、江戸時代(18 世紀)の伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)「動植綵絵(どうしょくさいえ)」のうちの、こちらの4点です。

伊藤若冲は近年、サブカルチャー好きの若者たちを中心に、若い世代にまで人気が出ている作家ですが、国宝にまでなっているんですね。

その人気の伊藤若冲の作品が見られるので、ここは貴重な展覧会場だと言えるでしょう。

老松孔雀図(ろうしょうくじゃくず)

老松孔雀図(ろうしょうくじゃくず)

老いた松と華やかな孔雀の対比は、お爺さんと若い女性、お婆さんと若い男性、のような人間界の対比を象徴しているような気もします。

芙蓉双鶏図(ふようそうけいず)

芙蓉双鶏図(ふようそうけいず)

これは面白い構図ですね。

雄鶏と雌鶏の組み合わせですが、雄鶏の頭はどこにあるか分かりますか?

私は雄鶏の羽根の上ばかり見ていて、尻尾の部分に頭があるのかなあと探してしまいました。なんと実際には、向こうを向いているのにそのまま向こう側に頭を落として、さらに足の間から赤いトサカの頭を突き出して、雌鶏にアピールしているのでした。

オスはメスの歓心を得るために大変なのですが、なんだか人間界にも通用しそうですね。

ちなみに、「芙蓉」の花は、「美女」を象徴しているそうです。

諸魚図(しょぎょず)

諸魚図(しょぎょず)

これはいかにも伊藤若冲らしい絵ですね。いろいろな魚を図鑑のように正確に描いていると同時に、タコの足に「子ダコ」がくっついていたりして、遊び心が感じられます。

蓮池遊魚図(れんちゆうぎょず)

蓮池遊魚図(れんちゆうぎょず)

魚の群れがハスの池を泳いでいますね。

みんな同じ方を向いて、同じように泳いでます。

ところがよく見ると、みんな似ているようですが、1匹だけ違う種類の魚だということが分かります。上の9匹が鮎(あゆ)で、下の1匹だけが「オイカワ」という魚だそうです。

オイカワの1匹が、ハスの花の一番近い位置にいるんですね。ハスの花はもちろん仏様の象徴なので、いろいろな解釈ができそうです。群れていては真実に辿り着けないよ、とか、周りとちょっと違う変わり者こそが真実に近いところにいるのだよ、とか、真実に近づけば、周りも一緒に着いてくるものさ、とか。

絵の中にちょっとした「仕掛け」が感じられるところが、伊藤若冲が若者たちにも人気になっているポイントかもしれません。

国宝「唐獅子図屏風(からじしずびょうぶ)」

唐獅子図屏風(からじしずびょうぶ)右隻

まさに「絵に描いたような」「唐獅子」ですね。「唐獅子」と言えばこのポーズです。

こちらは狩野永徳(かのうえいとく)16世紀、桃山時代の絵の屏風です。

この屏風の左側には、狩野常信(かのうつねのぶ)17世紀、江戸時代の絵の屏風があります。

狩野派は代々、徳川家の御用絵師の家柄です。「常信」さんは「永徳」さんに憧れを持っていたんでしょうね。

戸島光孚(としまこうふ)ほか「双鶏置物(そうけいおきもの)」

双鶏置物

戸島光孚(としまこうふ)大正5年(1916年)の作品。

こうして見ると、鶏(にわとり)は、絵や彫刻の題材になりやすいみたいですね。

高島屋呉服店「閑庭鳴鶴(かんていめいかく)」

閑庭鳴鶴(かんていめいかく)・三曲一双(さんきょくいっそう)

閑庭鳴鶴(かんていめいかく)とは、静かな庭に鶴が鳴いている、という意味ですね。

三曲一双(さんきょくいっそう)とは、この屏風(びょうぶ)は折り曲がるところが3箇所で、左右の(左隻、右隻)屏風の二つで一組ですよ、という意味です。

「高島屋呉服店」からの提供、というところが、その高級感と、歴史を感じさせます。

この屏風「閑庭鳴鶴(かんていめいかく)・九重之図刺繍屏風(ここのえのずししゅうびょうぶ)」は、絵の画面が全て刺繍である、というところがびっくりものなのです。

花は分かるとしても、葉っぱはどうやってるんだ、とか、近寄って拡大鏡で見たいくらいのものです。

左隻(させき)の拡大写真、細部が見えるでしょうか

酒井抱一(さかいほういち)「花鳥十二ヶ月図」

花鳥十二ヶ月図

酒井抱一(さかいほういつ)「花鳥十二ヶ月図(かちょうじゅうにかげつず)」は、江戸時代、文政6年(1823年)に描かれました。晩年の作品なので、それまでの画業の集大成と言えるでしょうね。

藤原定家が花と鳥の組み合わせを歌に詠んだのですが、それを絵でもやってみよう、ということで、始まったのが、この「花鳥図」というジャンルです。

写真は右から、

二月・菜花(なのはな)に雲雀(ひばり)図

三月・桜に雉子(きじ)図

十月・柿に小禽(しょうきん)図

十一月・芦(あし)に白鷺(しらさぎ)図

です。

いちいち考えてみると、なるほどな取り合わせですね。雲雀(ひばり)はちゃんと飛んでます。

桜に雉子(きじ)が留まっているのは見たことはないですが...。

重文「萬国絵図屏風(ばんこくえずびょうぶ)」

萬国絵図屏風(ばんこくえずびょうぶ)

重要文化財・萬国絵図屏風(ばんこくえずびょうぶ)桃山時代~江戸時代初期(17世紀)に制作されたと推察されます。

八曲一双(はっきょくいっそう)折り曲げ部が8箇所ある屏風が左と右、つまり「左隻・右隻」の二つで一組になっています。

写真は右隻(うせき)、つまり右側にある屏風です。

上部にペルシアの王様たち8人の王侯騎馬の絵があり、その下はローマ、モスクワ、アレキサンドリアなど、28の都市が描かれています。

日本に、南蛮貿易やイエズス会の宣教師によってもたらされた、西洋の地図などをもとに、日本人によって制作された、初期の「西洋絵画」です。

その忠実な再現度は、大したものだと思います。西洋風なものに対するセンスを、昔の日本人もちゃんと持っていたんですね。

並河靖之(なみかわやすゆき)「七宝四季花鳥図花瓶(しっぽう・しきかちょうず・かびん)」

並河靖之(なみかわやすゆき)「七宝四季花鳥図花瓶(しっぽうしきかちょうず・かびん)」

今回、私が最も感銘を受けたのは、この花瓶です。

その地の部分の「黒」の色が艶(つや)やかで「漆黒」という表現がピッタリなくらいに並外れた黒になっています。

展示方法も見事ですね。背景を真っ暗にして、この花瓶の漆黒と溶け合うような効果を出しています。

そして、その漆黒を背景に、緑色の色合いの濃淡と、光の当たり具合の濃淡が、見事に効いている木の葉の立体的な奥行き感が、尋常ではないですね。

まるで、この木全体が、この上なく透明な、このガラスで出来ているかのような花瓶の中にそのまま縮小されて閉じ込められているようです。鳥たちも一緒に。

この花瓶を見るためだけにでも、この展覧会を見に来る価値は十分すぎるくらいあると思います。

今回のお話

今回は、皇居三の丸尚蔵館で開催の「開館記念展 皇室のみやび―受け継ぐ美―」に来てみたら、皇室由来の展示物だけあって、「あの」伊藤若冲など、見どころ満載の内容ですが、中でも、並河靖之(なみかわやすゆき)作「七宝四季花鳥図花瓶(しっぽうしきかちょうず・かびん)」は大したものだった、というお話でした。